独立をめぐる住民投票問題で、スコットランドについて多くのメディアがその歴史、イギリスが正式には連合王国と呼ばれる理由などを紹介していました。多くの皆さんがこれらの情報によりスコットランドを従来より身近に感じたのではないでしょうか。
独立に賛成か、反対かは彼らが決めることであり、私たちが口をはさむことは控えねばなりませんが、個人的には独立が否定されてよかったと思っています。それにしてもきちんと住民投票で決定を行ったイギリスの民主主義の定着には敬意を表します。
異なる文化、歴史を認めつつ、その中でうまく多様性のメリットを生かすのが人間の知恵でしょう。自然の生態系も多様性が最もその安定に大きな要素となっています。
淑徳大学の授業では共生を中心とした生態学を学んでいきます。自然に学ぶことの大切さを理解してほしいと思います。
【スコットランド人の想い出】
もう20年以上も前になりますが、フランスからドーバー海峡を船で渡りイギリスに行ったことがあります。深夜に到着したため、多くの人がホテルまでのタクシーを待っていました。私の前に並んでいた新婚風のカップルが、私のホテルを聞き、同じ方向なので、相乗りを勧めてくれました。
ところが、タクシーに乗車後20分以上経ったころでしょうか、若者と運転手さんが喧嘩を始めました。運転手さんがわざと遠回りをしたということでクレームをつけたのが原因でした。ロンドンのタクシーの運転手さんは極めて難しい試験があり、世界でも最も信頼されているプロのドライバーです。その運転手さんにクレームを付けたので、運転手さんが怒ったわけです。
喧嘩の最後に運転手さんがいった言葉が忘れられません。「お前らスコットランド人よ。ロンドンになんか来るな、早く国に帰れ」
イギリスは連合王国という形で国としては一つですが、国民の心の中は何年たっても4つに分かれているのかなと、感じた次第です。
歴史学の研究テーマとして、人間の心の融合にはなにが最も大きな因子なのか、その中での国民性の影響の大きさなどがあると思います。歴史学科の学生諸君がこのようなテーマに向かって研究をし、素晴らしい論文を書いてくれることを期待しています。
表現学科教授:北野 大